楽園はどこにあるの


 好きな人が、います。
 どうしようもなく、好きな人がいます。
 でもどうやったって、その人の隣に立つことが、できないのです。




 たらし、ではない。
 だって、たらせてないもん。

「幸治、一緒に帰ろ」
 HRが終わってすぐに隣の教室に駆け込んで、
 目当ての蜂蜜色した174cmの彼に、声をかけた。
 隣にいた雪乃ちゃんが、眉をひそめたのが見えた。
 その雪乃ちゃんが、隣にいる蜂蜜色の彼と絡めあっている手も見えた。
 けど、見なかったふりをする。
「雪乃が、いる」
「でも、昨日も一緒に帰ったよね?独り占めは、ヒドイんじゃないかな?」
 雪乃ちゃんに笑いかけると、彼女がもどかしげに口をひらいた。

 でも知っている。
 ぜったいに、雪乃ちゃんは言わないって。


「幸治、私ならいいよ」
 そして知っている。


 ぜったいに、幸治はこっちに来るって。


「悪い、な」
「ううん」

 首をゆるく振った雪乃ちゃんの顔には、明らかな失望が浮かんでいた。
 ガッカリしているその光景は、いつも一緒で、それでも段々濃くなってきた。

 そうさせているのは、アタシ。

「電話、するな」
「うん。また、明日」

 寂しそうに笑っている雪乃ちゃんなんか、見ない。
 すっこく悲しそうにしている雪乃ちゃんなんか、頼まれたって見ない。

 だって。

「幸治、帰ろ」

 アタシも幸治と、手をつなぎたいんだもん。







next








































2007/08/18





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送