「しりとり、しよ」
いつもの帰り道を、いつも一緒の航と帰る。
「暇じゃないんだけど」
しりとりイコール暇な時にするもの。
"家まで歩く"は暇じゃない。
「誰が暇な時にしりとりするのさ!こういうのは、フインキ、ムード!」
すかさず反撃に合った。
「そんな気分じゃない」
負けじと言ってみたり。
「じゃあ始めるね。"りえちゃん、好きです"」
アタシの意見は無視ですか。
「は?」
でもって、何だよ。ソレ。
「りえちゃん、"す"だよ。"す"!」
連呼しなくっても分かるけど。
けど、違くない?
「しりとりって、単語でしょ?文じゃん。それ」
「だーかーらー!りえちゃん、"す"だって!」
アタシの意見は無視ですか・パートつー。
「気分じゃないって言ってるじゃん」
「"りえちゃん、好きです"」
アタシの意見は無視ですか・パートすりー。
「好きって…」
「好きです。好きです。好き好き大好き。アイ・ラブ・ユー!!!」
一人でテンション上がっていく航に、ついていけないアタシ。
ううん。違う。ついていきたい。
けど、
ついていっていいの?
「だから答えて、りえちゃん。僕の事、好きか嫌いか、言って?」
ギュッと手を捕まれて、心臓がドックンって。
丸くて黒い目に見つめられて、ああ。痛キモチイ。
「テレパシー使ったの、気づかなかった?」
「え?」
「テレパシーを使って言ったんだけど、気づかなかった?」
笑える。
「ウソ?本当に?」
「うん。だから、航は"た"だよ」
た…?
うん。た。
あって顔した航は、スグに丸い目を細くした。
暇で、フインキないけど。
けど。
「"たくさんのりえちゃんの時間を、僕に下さい"」
「"嫌になるくらい、一緒にいて"」
このキモチは、ウソじゃないから。
玉ねぎとじゃがいものお味噌汁を作っていた時に出てきた。
しりとりはアタシの中で、『暇だからする』じゃなくって、
『会話になるからする』なんだよね。
『りんご』って言って『ゴリラ』っていう人と『ゴマ』っていう人がいる。
何て素晴らしいんだろう。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
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