昨日、クタクタになるまで連れ回した成果が、今、やっと実る!!
 相手はやはり、6歳児だった。遊園地に連れ出して騒ぎまくったおかげで、
 マシュマロのほっぺを、つっついただけでは起きなかった。

 ゆっくりと、慎重に。
 かかとからつま先に重心をかけて、ゆっくり、ゆっくり…。

 うぐいす張りではないけれども、きぃきぃ鳴る最大の難所の床をなんとか越えて、
 後はもう黒塗りのドアを開けるだけ。
 ドアの前で小さくガッツポーズをとり、ドアノブに手をかける。
 神は俺を見捨てていなかった!俺は勝った!!

「ダン、何、してるの?」

 それは、唐突すぎて、ちっとも予測していなかった。
「なななな、何もしてないけど!?」
 振り返らなくても分かるジョシュの声に、抑えきれずに声が裏返る。
「声、裏返ってる」
「そそそそんなこと、ないけど!?」
「ねえ、どこにも、行かないで」
 小さな手が、黒の作業服を掴む。

「仕事が、あるんだ」
 ジョシュを任せられてからも仕事の量は変わらず、消化されることなく量は増え続けている。
「あたしの子守も、仕事でしょ?」
「そうだけど…」
「仕事とあたし、どっちが大事なのよ!」
「あのなー…」
 どこのドラマで覚えたんだ、そんなセリフ…。

 呆れ果てて、後ろを振り向く。
 小さなクマのぬいぐるみを小脇に抱えたジョシュが、茶色の目に、
 今にもこぼれそうなぐらいに水をためて、こっちを見上げている。
「仕事なんだ」
 その目と高さを合わせて、ゆっくりと言った。
「あたしの子守も、仕事だよ」
「俺の仕事は、俺にしかできないんだ」
 命がいくつあっても足らない、キケンな仕事だ。
「でもダンは、組織に入ってるじゃない。そっちの人に、その仕事は任せればいいじゃない」
「そうしたいんだけどさ」
「だったら…!!」
「でも、俺にしかできないんだよ」
 遮ってそう言うと、抑えきれなかったようで、涙がこぼれだす。

「俺の力を、見ただろ?」
 消えかけていたジョシュを、無理矢理に留めたあの力を、ジョシュも忘れてはいない。
「あれは、俺にしかできないんだ」
 自然の摂理を曲げて、死者を永らえさせる、あの力は。
「助けを必要とする人が、いるんだ。だから、行かなきゃいけない」
 ぽんぽん、と。寝癖であっちこっちにはねている髪の毛をなでつけてやる。

「さみしい」
 うつむいたままのジョシュが、そう呟く。
「すぐに他の人が来るから、そいつと遊びな」
「ダンがいい」
「だから」
「ダンの仕事が終わるまで、その人で我慢する」
 茶色の目を大きくして、ジョシュが言う。
「だから」

「だから?」
「早く、帰って来てね」

 お土産も、忘れないでねと。

「りょーかい」
 ニッと笑うと、ジョシュも笑う。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
 一度掴んだドアノブを、もう一度掴んで開ける。
 輝く太陽が、地上に出てきた。
「ダン!」
 また駄々をこねるのかと思えば、ジョシュは自分の白いほっぺを指差す。
「ん?」
 意味を掴みかねて聞き返せば、目を輝かせている6歳児。
「行ってきますの、ちゅう!」


 どこで覚えたのか知らないけど、ませた表現を知っていて。
 一週間もずっと、俺を放さない我儘娘かと思えば、聞き分けがよくて。
 そのくせ、やっぱりませてて。


 でも、なんか、憎めないんだよ。
 かがんで、はいどうぞ。
「行ってきます」




 お土産は、なににしようか。







































へたれキャラにするつもりが…。
文才がないと、苦しい…。
苦しいけども、メモ帳ひらいたらサラサラ書けて、それが救いだった。
どこが、『か細いなきごえ』なんだと言いたいでしょうが。
ギャップ命ですからね(多分、本当に本当に一部の人にしか分からない)
なんか、出来がイマイチなんですけど。
もしかしたら、そのうち書き直すかもしれない…。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
2006/08/08




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