「先生」
「なんですか?」
「とても疑問に思っていることがあるのですが、質問してもよろしいでしょうか?」
「生徒の興味関心事に答えるのが教師の使命です。なんでも言って下さい」
「お言葉に甘えて、お尋ねします。この本に、“百万回の愛してるよりも、私を一度、強く抱きしめて”とありますが、
 言葉よりも動作、抱きしめるという動作には、どのような力があるのでしょう?」
「とても興味深いことが書かれた本ですね…。………って、かんのー小説って帯がついてますが…?」
「気のせいです。あえて言うなら、私はもう18です」
「流して欲しそうなので、話を進めましょう」
「そうしてください」
「そうですね…。あなたは小さな頃、夜泣きした時にご両親にあやしてもらったことを、覚えていますか?」
「そんなの覚えてたら、こんな学校には来ていません」
「痛い所を突きますね…。ですが、あなたは抱っこしてもらい、背中をポンポンされ、耳元でささやきを受け、 次第に安心してグッスリ眠ったのです」
「そうでしょうね」
「そうなのです。抱きしめるという行為には、安心をもたらす力があるのです!」
「ですが先生。待ち合わせ場所に遅刻をする友人が、断りの連絡を入れてくれるのには安心します。 ここには、言葉の力があります」
「そうですね」
「私には、百万回の言葉ではなく、一回だけの動作を求める彼女の心境が分かりません」
「ということは、あなたは百万回の愛してるを求めているのですか?」
「一円よりも百円です」
「分かりそうで分からない比喩ですね」
「よく言われます。先生、どうしてでしょう?」
「それはあなたの読書力で培われた想像力と、それを表に出す文章能力の差異のせいで…」
「いえ、私が聞いているのは、そのことではなく」
「失礼しました」
「しっかりして下さい。だから生徒になめられて、靴箱に得体の知れない黒いものを入れられるんです」
「慕われている証拠です」
「いい方に解釈しないで下さい」
「人間、ポジティブシンキングが大切です」
「話を脱線させないで下さい」
「……先生をイジメて、楽しいですか?」
「いいえ、ちっとも。それで、どっちなんですか?」
「私は、Mですよ。そもそも、日本人の8割は…」
「殴りますよ?」
「笑顔で毒を吐くのは止めて下さい…」
「えへ」
「ええと…。私は、言葉には暖かさが欠けていると、思うのです」
「暖かさ?」
「はい言葉は空気の振動です。それは衣服をまとい、心に厚く高い壁を築く私達に、届いているようで届いていない。 そんな暖かさでしかありません。
 ですが、抱きしめる動作には暖かさを共有することができます。 相手に自分の体温を移し、その暖かさに届けたいキモチをこめるのです。
 そう!心の厚く高い壁は、氷の壁!共有する暖かさによって、その壁は融けてキモチが通じ合うのです!」
「ほう…」
「分かっていただけたでしょうか?」
「はい、先生。おかげさまです」
「君は優秀な生徒ですものね」
「先生、私に、教えて下さい」
「まだなにか?」
「はい」
「どどどどどどどどどど、どーーーしたんですかっっ!?」
「私のキモチが届くように、先生に抱きついているんです」
「ここここここんなの、だだだだ誰かにみみみ見られたらっっ!」
「鍵はかけてあります」
「………確信犯ですか」
「バレましたか?」
「バレバレですよ」
「先生」
「なんですか?」
「私のキモチ、届きましたか?」








































  「怖がらないで」はどうしたんだ…!!
  すいません。どうにも長くなってしまったので、先にこちらをupします。
  けっこう、気に入っているんですが、イカガでしょうか?
  私は、抱きしめてもらいつつも、百万回の愛してるが欲しいです。
  ええ、人間は欲張りな生き物ですからね。
  え、誰?今そこで、『そんな相手いるのかよ』って言った人。
  私も負けじと、靴箱の靴に、ボンドいれますよ?
  乾いてない、まだねちゃっとしたボンド、入れますよ?
  踏んだら最悪の、まだねちゃっとしたボンドをいre…

  ここまで読んで下さってありがとうございます。
  2006/09/18






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